しろきつねおすしー図書館

おそうざいコーナーみたいなぶろぐ

ぜんまいじかけの何かの部屋外伝④

冷たい雨が降る山道を

東へと

眼鏡の男が静かに目的もなく歩く。

 

腕の中でぐったりとする

白いきつねは

ひときわ白く、

繊細な毛並みが

薄曇りの空をも美しく見せる。

 

ちからなく首をだらりと下げ、

尾も同じように弧を描き

地面を指している。

 

妖狐と言われ続け

それでもなお、

救い続けた狐たちは

格となる柱を次々と失う。

 

狐たちの存在も

救ってきた数々の功績も

いまは、幻のように

闇に消える。

 

 

男はその場でちからなく膝をつき、

そのまま、天を仰ぎ

めがねを外す。

 

瞼に雨のしずくがはじけ、

追っ手を葬ってきた

その額には新しい返り血が

雨と共に薄くなり、

水溜まりに波紋をつくる。

 

 

それでも白く

美しい狐は

可憐で儚い

少女のような純真さを

その身に宿す。

 

その身体がふたたび

うごきだすことはなく、

ただ時間だけが過ぎる。

 

雨が静かに地面に音を鳴らす。

 

雲間から、日が再び光をつくり

過ぎる時間と共に

雨雲も遠くへと流れてゆく。

 

その流れ、風を

寂しげに眺めると、

 

男は来た道を鋭く睨み、

その目は、

兵達の残骸と、首のない大柄の男の骸に

向けられる。

 

 

悲しみを超えた先の男の目が

何かに気づく。

 

…。

足りないものがある。

 

首…、

なんだ?

あるはずの物がない。

 

何かがいた…?

鼻を鳴らす。

 

見える、

ちゃんと見えます。

虹色の光が微かに見える。

この先に…、

何かが待ち構えているな。

 

……。

わかりました。

わたしはこの先には進みません。

 

あなたの作る物語に

従いましょう。

 

 

男は美しい狐を抱きかかえたまま

来た道を戻り駆ける。

 

意を決した男が

スンと短い呼吸をし、

姿を消す。

 

 

 

~~☁️

     ~~🌧️

  🌈

 

 

霧深い沼地に鳥居⛩️がひとつ。

 

男はそこにいた。

 

せめて、あの方と同じ場所で。

いつか、憧れのものになって

おふたりが出会えますように。

 

いま、跳躍したとしても、

お二人を救うことは

私には無理だろう。

 

わたしはあなた方を尊敬していますし、

ずっと憧れだった。

 

だから、ずっと見てきたんだ。

どんなことを軸とし、

何を嫌がるかも知ってる。

 

ずるいな。

わたしだけを置いていくなんて。

でも、繋いだ命は守ります。

わたしは生きることを選択する。

 

長く辛い旅になったとしてもです。

未来につなぐ。

 

それがわたしの軸です。

 

ふう、

この借りは

未来で返してもらいますよ。

 

500年先で必ず、

笑わせてくださいよ。

 

さて、わたしは

命をかけて、跳躍はしません。

わたしがやると、

死にますからね(笑)

 

命をかけることを惜しまないあなた達を

救ったところで、

それを軸としているのだから

わたしが何度救ったとしても、

あなた方は命をかけて救うことをまた

選ぶのでしょう?

 

にっこりとそして

寂しげに笑う。

 

やれやれ、ほんとうに

わがままな方々だ。

 

結末はどうなるのか

楽しみに待ちます。

 

あなた方を書き記し

未来のあの子に残します。

 

文才のないあなた方には

無理ですからね。

 

はぁ、

ほんとにもう。

 

憎まれ口を散々言うと、

ため息をつき

男が眼鏡を拭く。

 

そっと、鼻にのせて

遠くを見る。

 

北の方角には

綺麗な虹がかかってゆく。

 

 

さて、

わたしはしばらく旅をしたら、

北へ帰ります。

 

また会いましょう。

 

おふたりで

末長きしあわせな…、

 

いや、やめましょう。

 

そうですね(笑)

ゆかいでかわいい未来の…

 

うん、

すてきな夢を…。

 

 

ーーーー⭐ーーーー

プツン

 

 

 

 

 

おしまい⭐🍎

 

 

ー備考ー

このおはなしの曲のリンクはこちらです。

曲あり、曲なしどちらでもお好みで

お読みくまさい(笑)

~消えた命と繋ぐ者の軸

https://youtu.be/KLVKhUH--wQ

(古川本舗⭐魔法)

 

ーぜんまいの部屋各話EDロールの曲はこちらー

https://youtu.be/zx1obWTMksw

(なきごと⭐メトロポリタン)

ありがとうございました!