しろきつねおすしー図書館

おそうざいコーナーみたいなぶろぐ

ぜんまいじかけのなにかの部屋⑧

脱走してんじゃねーぞ!

こら!

野太い叫び声が聞こえる。

 

うるさい声と

よろめく足元に

視界がゆがむ。

 

半妖…、

ありが…、

でも…、こ…先は

君…、殺…、未、な…、だ…、

 

さ、…、ら、君なら

い…、か…、、救…、…。

因果を…、変え…、れ…。

ま…、あ…ま…、う

あ…、こを頼…、よ…、

 

 

 

鼻から下を布巻した

大柄の男が

きつねを追い詰める。

 

次いで、後ろから

声がする。

 

狐の姿を模した

何かが影を映す。

 

あらあら、

毒がまわって

瀕死じゃないですか。

可哀相に…。

 

わたしにその跳躍の力とやらを

教えていただければ…、

助けてあげてもいいのよ。

 

やっ…、りだ…。

やっぱり…、こ…、に来…、た…。

白いきつねは笑顔で

呟く。

 

あり…と…、、みんなの…、

おかげで…、みつけたよ…。

 

白いきつねの

目に力が戻る。

 

なんだ?

こいつ、何を言ってる?

野太い声が近づいてくる。

 

 

キッときつく力をこめ、

毒を数秒だけ薄くし、

ことばを紡ぐ。

 

跳躍の…、力は

わたしが…、死ねば…、

次の者に受け継がれる…。

 

それは…、いちばん、

近くにいる

あなたかもしれませんね☆

 

にこりとわらい、

大柄の男を指差す。

 

 

きつねの形を模したものが

慌てて近づき、

姿を見せる。

 

あ、

こんにちはー。

はじめまして。

 

あなたが元凶でしたか。

御逢いできて光栄です。

ははは。

いてて。

 

 

ごめんなさいねと、

狐を模した者が

手を添える。

だいじょうぶかしら?と

わざとらしく手を撫でると

大柄の男に

顎で指図する。

 

ありがとうございもす!

すてきな夢を☆ミ

しろきつねが世界に感謝を込めて

わらう。

 

その笑い声をかき消す

大きなこぶしが一撃

きつねのからだを砕く。

 

空間に衝撃が走り、

はじけとんだ音が

不協和音のようにゆがんで消える。

 

ぐったりとした

きつねの身体が

冷えてゆく。

 

模した者が

毒針を刺し

白きつねの体を毒が

さらに蝕んでゆく。

 

元凶は君になってもらいます。

毒を吐き出した白いきつねさん☆

 

光のようなものが

模した者に移る。

 

……。

 

命はついえた…。

添えていた手を静かに離す。

きつねさん、

素敵な夢をくれて有難う。

 

そっと、あたまをなでると

その場を立ち去る。

 

沼地に沈めろ。

 

顎で使われた

大柄の男が、

苛つきながら

きたないものを扱うかのように

沼地に蹴り飛ばす。

 

…🌙

 

  ……🌙

静寂。

カタカタと何かが回転する。

……🌙

    ……🌙

歯車はまわる。

時が流れる。

 

遠く、都で

白い閃光が上がる。

 

なんだ?今のは…。

 

関所を越えて

北へ向かう山道。

 

七つの刀を器用に繰り出し

前方を固める兵士を次々と

なぎ倒しながら

駆けてゆく侍が呟く。

 

お侍さん!

後を追う小柄な少年もまた

槍と弓を器用にあやつり

中、長距離の追っ手を地面に転がす。

 

この先の山道を東へ!

森に入ります!

 

承知!

 

二刀をくるくると

回転させ、背後にいる少年に投げる。

 

腰を一段降ろし、力を込める。

侍の駆ける速さが増す。

 

壱、弐、参、死、悟!

順番に刀を繰り出しては

切り捨ててゆく姿は

まるで…阿修羅のようだ…。

 

……。

 

ようやく、

大将様のおでましか。

 

そう呟くと侍は

鋭く睨み、憐れむように呆れ、

そして、集中する。

 

駆けながら、

五刀をすべて鞘に収めると

前方で待ち構える大柄の男に

両の手を広げる。

 

動きを止めぬまま

両脇から、何かを取り出し、

目の前に転がす。

 

なんだ!?

筒か、?

大柄の男が警戒し、1歩退く。

 

侍が無防備のまま、

まっすぐに突進する。

 

筒の動きが止まり、

その場にはらりと

巻物が広がる。

 

なんだ?文字か!?

 

阿呆は見るー^^☆

 

その文字を見た

大柄の男の頭が

沸騰し、

野太い雄叫びを上げる。

 

 

そのまま

にやつく侍が懐に飛び込む!

お前だな?

きつねを虐めたのは?

 

睨み付ける侍に

大柄の男が迎え撃ち、

怒りとともに

重量感のある刀を振り切る!

 

お侍さん!そこから東へ!

 

承知!

侍は馬鹿にしたように

トンっ と刀に触れると、

東へ飛ぶ。

 

背後の少年も何かを飛ばす。

 

大柄の男の目前で

ばさっ、と

傘が広がり、

次いで、

回転した二刀が

弧を描き両脇から

大柄の男の首を跳ねる。

 

録…!死地…、…。

どすん!

と大きな音をたてながら倒れ、

 

首が巻物の文字の元へと

転がってゆく…。

 

見開いた目はその文字を

凝視したまま静まり返る。

 

阿呆…、。

 

 

速度を落とさずに

東へ駆けながら

2人は話す。

 

お侍さん?

 

ん?

 

あなたはにんげんですよね?

 

ああ、そうだが。

 

何故、私たち

きつねを助けるのです?

 

 

昔の恩義…、かな。

 

いや、違うな

好きだからだな!

ははは!

 

いい歳をした

ざんばら髪の男が

屈託なく笑う。

 

 

子供のように笑う

この方は

ほんとうにきつねが

好きなのだなと思った。

 

お侍さんは、

これからどうするのですか?

 

そうだな、

この国を変える。

ひとつにしなければ

ならない。

そんな気がするのだ。

 

そうですか…、

わかりました。

では、わたしもちからをお貸し

します。

 

あなたの目指す世界を

見てみたい。

 

たとえそれが叶わなかったとしても、

歴史の裏に

埋もれてしまったとしても、

 

わたしたちが

残しましょう。

後世に。

 

侍の男は

にこりと照れながらも、

鋭く先を見る。

 

あ、

そういえば、

阿呆は見るー^^☆は

いつ描いたのですか?

 

ははは。

走りながらだ。

!!

ええー、なんて器用な…、

 

おどろいた。

でも、この方といると

楽しそうだ。

ふふふ。

 

 

……🌙

    ……🌙

 

 

 

大柄の男の首を

何者かが足蹴にする。

 

 

刀に、傘か…。

風に鼻を鳴らす。

 

まだ遠くはないな…、

 

みえる、みえる。

狐の走る姿がみえる。

 

狐め…。

 

跳躍するにはまだ、足りぬ…、

狐のちからすべて頂くぞ。

 

 

北の方角を指す

大柄の男の首が

きしきしと音をたて、

何者かの籠める足に

潰され、弾け飛ぶ。

ーーーー⭐ーーーー

プツン

 

 

 

 

おしまい⭐🍎

 

ー備考ー

このおはなしの曲のリンクはこちらです。

曲あり、曲なしどちらでもお好みで

お読みくまさい(笑)

 

前半~跳躍するきつねと模する者

https://youtu.be/pKEyFMB6a30

(古川本舗⭐ 春の)

後半~戦闘、侍と少年と奪う者との対峙

https://youtu.be/0zUE1E3e7Mg

(spangle call lilli line⭐nano)

 

ーぜんまいの部屋各話EDロールの曲はこちらー

https://youtu.be/zx1obWTMksw

(なきごと⭐メトロポリタン)

ありがとうございました!