しろきつねおすしー図書館

おそうざいコーナーみたいなぶろぐ

ぜんまいじかけのなにかの部屋⑤

何であいつばかり

あの人のお供なんだよ!

 

私が一緒ならあんなことには

ならなかったんだ!

 

白い肌の女が叫び、

その怒声とともに

大きな岩が割れる。

 

その岩が砕ける音に

細身の眼鏡の男がやれやれと

溜め息をつく。

 

もう、その辺にしてください…。

あなたという人は、

ほんとうに…、

 

うるせー!

いつもお前とばかり

組まされてイライラしてんだ!

ぜんぜんつまんない!

ときめかない!

 

女は一撃で

壁を壊し、外へと走り出して行く。

あーっ!もう、

ちゃんと直してくださいよ!

 

少し集中した男が

手をかざすと岩は元に戻り、

壁の穴から女を追う。

 

 

走りながら

ふりむきもせずに

ゆびをくるりとまわすと

壁が静かに音もたてずに

ふさがる。

 

男が鼻を一瞬、

スンッと

短い呼吸をしたかと思うと

どこかへと消えた。

 

 

忍の者か…、

少し調査が必要だな…。

 

女を追うか…、

そのほうが

わかりやすそうだ。

 

 

 

女の叫び声が聞こえる。

その声と共に

大柄の男が

吹き飛ぶ。

 

 

あーっ!

また…。

細身の男があたまを抱えながら

女をたしなめる。

 

なにをしたんです?

ちょっと邪魔だから吹き飛ばした!

 

はぁ!?

やめてくださいよ!

死んじゃいますって!

 

だって、こいつ

山賊だぜ。

悪いことしてた!

 

山賊なんて相手にしなくても

いずれかってに滅びますよ!

私たちには他にやることがあるでしょ!

ここは京なんです。

北国のようにはいかないんですよ!

 

あー!うるせー!

だまれ!もやし!

おまえのはなしはつまらん!

酒だ!酒…、

 

ちょっとまて、いや

待ってください姫…。

 

なんだ?

都のほうが騒がしいな…。

 

姫はやめろ!ばか!

 

大丈夫です。

そこまでやれば

姫には見えませんから…。

 

おい!

埋めるぞ、おまえ…。

 

女の

火がつきそうな口元をおさえ

男が眼鏡を外す。

 

あれは…。

きつねか…、!

 

だれだ!?

だれが殺られた…!

 

南部のきつねか!?

 

女の目を抑える。

周囲の

風向きが少し変わる。

人々の声が聞こえる。

 

人の子の英雄が

化けぎつねを退治した…、

人の子の

英雄もまた戻らなかったそうだ…。

 

ひそひそと、聞こえる声と

喜びの声が木霊する。

 

兵士や街人が

意気揚々ときつねの骸を

木にくくりつけ

城へと向かう。

 

なんてことだ…。

やはり、戻るべきではなかったんだ。

 

旅の途中、

我々も何者かに襲われた…。

めちゃくちゃにしすぎなんですよ!

この姫は…、!

もう少し、早く着いていれば…。

 

!!?

姫がいない!?

 

気づくと、

雄叫びをあげながら

兵士を次々と吹き飛ばす姫の姿が

見えた。

速い!

 

男が眼鏡を投げ捨てる。

 

その先には大粒のなみだを

撒き散らしながら

回転する女がいた。

 

その身体から

どこにそんなちからがあるのか。

直線的な動きだが

無駄がない。

両手、両足、すべてから繰り出す

衝撃、しなりは

美しい舞のようだ。

 

円上に都の姿が変わる。

静まりかえる都。

女、子供、街の男は

へたりとその場に座り込む。

 

悪意のない者を避けて

舞っていたのか…、!

なんて…、

 

いや、気づかなかったが

あの男も、一緒に舞っていたのか!

 

女は天を仰ぎ、

涙をからだの中心にあつめるように

祈る。

 

男がそっと涙を拭うと

きつねの亡骸を抱いて

どこかへと走り出す。

 

追うつもりで

力をこめたその時。

!!

ザクッと耳元に何かが刺さる。

なんだ?

歯車か!?⚙️

 

どこから飛んできた…!

 

!!

見失う。

目が眩む。

 

意識がなくなる…。

そのまえに、仲間に

調査書を飛…、。

 

 

🌙…… 

   🌙……。

 

 

 

ひとしきり泣いたあと

女が愚痴をこぼす。

 

だから、私も連れていけって言ったんだ!

いつもかやのそとにする!

あの人もそうだ!

私を置いて先に行った!

 

なんであのちびなんだ!

何もできずに見殺しにしたような

もんだろ!

なんで…!

 

男が口を開く。

あの方はあなたの危うさを知っていました。

命を惜しまずまっすぐにあなたは走る。

あなたは、

毒には向きません。

連れては行けないんですよ。

 

あの方はなにより

誰かを失うのを嫌がる。

救えないことに耐えられない。

 

あの方は未来を見通していました。

だから、跳躍する。

救うためにすべてをかけた。

 

あのちびっこを飛ばしたのにも意味がある。

大きな意味があると

わたしは思っていますよ。

 

とはいえ、

そういうわたしもあの方のようには

毒には耐えられない。

 

時間を跳躍するにも、耐えうる身体の強さが

ありません。

不足していたんです。

連れていってはもらえなかったのは

あなたと同じぐらい残念でした。

 

知恵と学問、頭のキレでは

わたしのほうが少々、上でしたがね…。

 

あー、おまえの話しは

ほんとうにつまらん。

少し夜風にあたってくる。

 

ふう、

私たちには何ができるのか。

500年、ですね…。

 

何かを残しましょう。

あの子が悲しまないように。

せめて、あの方の物語を

残しておきましょう。

 

あの子がいつか、

未来で

生まれ変わりのあの方に出会えるように…。

 

しくしくと

きしむような香り…、

!!!

なんだ?

大勢の兵士の匂いか…。

 

姫…!

 

あかん!

もう飛びだしとる!

 

 

 

おうおう!

おめえら!

わざわざ御礼参りにきたのかよ!

ひとりで来れねえくそどもが!

ひとり残らずぶっつぶす!

 

そう言い終わる前に

60.70人の兵士が

吹き飛んで行く。

 

姫!

全体的に囲まれてる!

上に飛んで!

 

!!

ん…。なんだ…、

火薬の匂い…。

 

!!!

 

だめだ、姫!

それ以上は飛び込んではいけない!

 

おう!

銃だろ!

言われなくても

わかってんだよ!

 

そう言いながら走り込む先で

大粒の涙が

銃声と共にはじける。

 

いたくねえぞ!

ばか!

 

胸のあたりを撃ち抜かれ

膝を着く。

 

泣いてんのは

いたいからじゃねえぞ!

このわからずやどもが!

 

涙と血をぬぐい、

地面になにかを描く。

 

目を覚ましやがれ!

くそにんげんども!

 

ぶわっと

白い閃光が天に昇る。

 

その刹那、

その血で呼び出した

大きな竜の形をしたなにかが

周囲すべての兵士をなぎ倒して行く。

 

 

ははは。

カタキはうった。

きつねをなめるなよ!

くそが!

 

フゥ、フゥ…。

 

く、口が悪くてすまんね。

じいさんゆずりなもんで…、

 

あ、酒だ、

祝いの酒…。

ありがとう…。

 

酒じゃない、水です!

もう、しゃべらないでくださいよ。

口も悪いんですから!

 

はは、

よし…。全員消えたな…。

 

これでおまえひとりは生き残るだろ…?

やめてくださいよ。

そういうのは!

 

ただでさえ、仲間が少ないのですから!

止血と包帯を巻き付ける。

あなたは死なない。

 

 

わかってるよ。

冗談だ…。

帰るぞ、北に帰る…。

 

まずは酒だ。

酒をくれ。

 

酔って酔って

眠らせてくれ。

 

夢をみたいんだ。

気持ちのいい未来の夢…。

 

私も会いたい。

チビとあの人に…。

憧れの…、に…、生まれ変わって…。

 

会いたいんだ…

 

ーーーー⭐ーーーー

プツン

 

 

 

おしまい⭐🍎

 

ー備考ー

このおはなしの曲のリンクはこちらです。

曲あり、曲なしどちらでもお好みで

お読みくまさい(笑)

 

~戦闘、ワヒトと姫と眼鏡の男

https://youtu.be/0zUE1E3e7Mg

(spangle call lilli line⭐nano)

 

ーぜんまいの部屋各話EDロールの曲はこちらー

https://youtu.be/zx1obWTMksw

(なきごと⭐メトロポリタン)

ありがとうございました!